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2008年 7月 6日

一昨日(4日) に続いて民法772条の話題。実はこの条文については,もう一つしばしば誤って世間に伝えられている点がある。今朝の朝日新聞の社説でも 「離婚後300日以内に生まれた子どもは前の夫の子と推定する。民法772条には、こう定められている。」 とあるが,これが誤った表現なのだ。次に掲げる条文をよく読んでほしい。

  • 民法772条 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
  • 2 婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

これがなぜ 2項立てになっているのか,「妻が婚姻中に懐胎した子又は婚姻の成立の日から二百日を経過した後若しくは婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、夫の子と推定する。」 という文ではないのか,よく考えてみよ。2項所定の条件に該当する子は,「婚姻中に懐胎した」 と推定され,その推定が働く限りにおいて 1項により 「夫の子」 と推定されるのだ。2項で推定が働くのはあくまで “婚姻中の懐胎” までである。

ということは,例えば未熟児出産等により婚姻解消(=離婚)後 300日以内の出生でも婚姻中の懐胎でないことが証明できるときには,2項の推定が覆り,よって 1項にもかからないこととなる。要するに,1項の推定を覆すには “夫(前夫)の子ではない” ことを証明をする必要があるが,2項の推定を覆すにはそこまでの必要はなく “婚姻中の懐胎でない” ことさえ証明できればよい(上記早産の例での医学的証明のように)。

もしかしたら,行政の戸籍実務が 2項該当のケースでも直ちに 「前夫の子」 としていて,記事はそれを言っているのかもしれない。しかし文理上はそうではないのだから,やはり 「民法772条には……定められている」 と表現するのは誤りだ。一般の人が複雑な条文を理解しやすいように配慮したつもりなのか,それとも記事(社説)を書いた記者が無知なのかは知らないが,マス・メディアにおいて時折見られるこうした誤った表現はとりわけ許しがたい。マス・メディアのある種の暴力とさえ覚える。それは,立法者へのリスペクトを欠くものであり,また私たちのような,法ないし法律に関する教育や啓蒙に微力を注ぐ,そのささやかな不断の努力を一発で無に帰せしめるものだと思われるからだ。


ラグビー。春期の練習試合は今日が最後で,大阪府立大と。うだるような蒸し暑さの中,14対7 で大阪工大が勝利。

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