Toto “35th Anniversary : Live In Poland”

投稿者: | 2022-08-16
カバーアート

基本データ

アーティスト:
Toto
タイトル:
35th Anniversary : Live In Poland
レーベル:
Eagle Rock / Eagle Records
リリース年:
2014年4月29日

レビュー

  • 音質  ★★★★★★★★★☆ (9)
  • 曲目  ★★★★★★★★☆☆ (8)
  • 演奏  ★★★★★★★★☆☆ (8)
  • 雰囲気 ★★★★★★★★★☆ (9)

Toto(トト)のデビュー35周年ツアーから、2013年6月25日に行われたポーランドのウッチ(Łódź)にある The Atlas Arena での公演を収めたアルバムである。キーボードの David Paich(デイヴィッド・ペイチ)および Steve Porcaro(スティーヴ・ポカロ)ならびにギターの Steve Lukather(スティーヴ・ルカサー)、そして最も長く Toto のリード・ヴォーカルを務めてきた Joseph Williams(ジョセフ・ウィリアムズ)に加えて、ベースとドラムスのリズム隊はそれぞれ Nathan East(ネイサン・イースト)と Simon Phillips(サイマン・フィリップス)という手練からなる最強の布陣だ。

Toto のベースとドラムスといえば、もともとは Porcaro 3兄弟の次兄 Mike(マイク)と長兄 Jeff(ジェフ)がそれぞれ担当していたが、1992年に Jeff が急逝して Phillips に代わり、また2007年に筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症してその後2015年に亡くなった Mike に代って East が参加した(2007年の Toto のツアーでは一時的に Leland Sklar がベースを担当)。古くからのファンの中には「Porcaro 3兄弟こそ Toto だ」という人もいるかもしれないが、East と Phillips のリズム隊も腕前はこの上なく確かで、Toto の楽曲を再現するのにまったく遜色はない。特に Phillips は Toto のメンバーとしてすでに長く活動していることもあり、創作時から彼がドラムスを担当している楽曲も相当数を占めている。Phillips のドラム・プレイは、手数・音数が多くテクニカルでありながらも正確でタイトなリズムを刻む。また彼は、自身のドラムスだけでなくバンドも含めたサウンド・エンジニアリングも手掛けていたそうで、それゆえかドラムスの音が特にいい(後掲の音質に関するレビューをも参照)。

そうした観点から「演奏」の項目にポイントをつけたが、惜しむらくはこの時期のバンドにコンガ等を担当するパーカッション奏者がいなかったことだ(Toto にはしばしばパーカッションがサポート・メンバーで入る)。そのため “Africa” 等の一部の楽曲では、パーカッションの音が録音物により再生され、それと同期すべく Phillips がヘッドフォンを着けて演奏している姿を確認することができる。できればパーカッションも生演奏でやってほしかった。

また、これは好みの問題で、かつ致し方ないことでもあるのだが、年を取った Lukather のヴォーカルの声(というか発声方法)があまり好きではない。かつてはそれなりに爽やかな声だったのに、現在ではかなりしゃがれて絞り出すような声になっている。それともう一つ Lukather について言えば、(視覚上の問題なので音源のみの場合には無関係だが)ギター・ソロを弾く際などにしばしば舌なめずりしているように見えるのもいささか下品な感じがしてならない。

「曲目」については、35年の作品群から選りすぐった感は当然あるが、他方で「あの楽曲は入っていないの?」というものもある。個人的には例えば “I Will Remember” あたりは好きな曲で入っていたら嬉しかったのだが(もっとも同曲でリード・ヴォーカルをとる Lukather の声については前述のとおり)。以前 “Livefields”(1999年)の日本盤ライナーノーツで読んだ記憶があるのだが、ライヴ盤が出るたびに同じ楽曲では面白くなかろうとのことで収録曲になるべく変化をつけるようにしているとのこと。ただそこは「35周年」という記念でもあり、往年の楽曲も大半が含まれている。全体を通してみても、冒頭のグイグイ引っ張るような感じから “I’ll Be Over You” のようなバラード、中間にはヒット曲 “Rosanna”、そして終盤の “Africa” では East と観客による掛け合いを交え、“Home Of the Brave” で締める、とベスト盤的なプレイリストとしてもよい。

そしてこの作品はとにかく音質が秀逸だ。周波数特性(帯域)でいうと、画像のように最低域(60Hz 付近に低域のピークがある)から最高域(20kHz 超)までまんべんなくほぼフラットに音が出ている。

第2トラック “Goin' Home” を WaveSpectra で測定した帯域データ
“On The Run / Child’s Anthem / Goodbye Elenore” の帯域データ(WaveSpectra)

ダイナミック・レンジはそれほど大きくはないが、上記のように広い帯域に音が入っているのである程度は仕方がないのだろう。他方、シンセサイザー等の音数が多いわりにはすっきりと見通しのよい音になっていて、特にドラムスの音作りはお手本になろう。

さらにこの作品では、観客の熱量も非常にうまく収録されている。冒頭(第2トラック)での観客の手拍子はかなり存在感をもって聞こえるが、そのバランスが絶妙で、それがまたいっそう聴く側のこちらの気分をも盛り立てる。この公演は映像作品(Blu-ray および DVD)も出ているのだが、それをサラウンド環境で視聴すればさらに没入感が高まる(関堂は WOWOW で放送されたものを見た)。ある程度大きな会場で行うコンサートの音響・録音として「こうあるべし」とも言いうるサウンドに仕上がっている。

とにかく本作品は控えめに言ってもかなり上質のライヴ盤だ。Amazon Music(HD 表記)その他の聴き放題サービスや、OTOTOY でのダウンロード販売(44.1kHz/16bit の CD 同等音質)もあるので是非ご一聴されたい(なお関堂は本作の 48kHz/24bit のハイレゾ・データを e-onkyo において購入したはずなのだが、現在は取扱いがないようである)。

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