Frank Zappa “Halloween 77”

投稿者: | 2022-08-21

基本データ

アーティスト:
Frank Zappa
タイトル:
Halloween 77
レーベル:
Zappa Records / UMe
リリース年:
2017年10月20日

レビュー

  • 音質  ★★★★★★★★☆☆ (8)
  • 曲目  ★★★★★★★★☆☆ (8)
  • 演奏  ★★★★★★★★★☆ (9)
  • 雰囲気 ★★★★★★★★☆☆ (8)

Frank Zappa が1970年代半ばから1980年代前半にかけて、その時々のバンドを率いてほぼ毎年のように行っていたハロウィーン・コンサートのうち、“Halloween 77” の題名が示すとおり、①1977年10月28日第1公演、②同日第2公演、③10月29日第1公演、④同日第2公演、⑤10月30日公演および⑥10月31日(ハロウィーン当日)公演を収めた作品である。本作には頒布形式が2種類あり、一つは上記⑤および⑥のハイライトで構成された CD 3枚組(公式リリース番号は110K)だが、もう一つは ハロウィーン用仮装道具が入ったボックス・セット(公式リリース番号110)で、同梱された USB メモリーに上記①~⑥全公演の全楽曲が 44.1kHz/24bit の WAV データで収録されている(後者は限定生産ゆえ現在では中古でないと入手困難)。

六つの公演の各セットリストは、のちにアルバム “Sheik Yerbouti” に収録される楽曲を中心におおむね共通しているが、例えば10月30日公演では “Dancing Fool” の世界初演(World Premiere)や “Jewish Princess” の試作版(Proto Type)が含まれていたりするし、31日のハロウィーン当日は観客も一段と盛り上がっていて、飛び入り参加などもある。こうした点から、似たような選曲でも細かい演奏やノリの違いを感じとれるところは面白く、さすが Zappa だ。

この頃のバンド のことを、それを率いる Zappa はしばしば “rockin’ teen-age combo” と称して紹介している。実際にメンバーがみな10代ということではないのだが、他のどの時代のバンドよりもロック色が強く、確かに若々しい感じがする。これについては、とりわけドラムスとヴォーカルを担当する Terry Bozzio(テリー・ボズィオ)の寄与するところが大きく、ツイン・バスドラムを活かした彼のスピード感溢れるフィルインとパワフルなビートは、ロックのドラム・プレイとしても一流だ。その一方で、Bozzio はもちろん他のメンバーも Zappa の超技巧的難曲を再現するのに十分な力量を備えている。このことは各公演での “The Black Page #2” あたりを聴くとよくわかるだろう。

音質は、ロック音楽としては一般的な音作りだが、リマスターされているのか、過去に同じ音源を素材として制作された “Baby Snakes”(1983年)よりもしっかりと重厚感を増しつつクリアネスも上がっているようだ(ダイナミック・レンジも平均で9を得ている)。

“Wild Love (Oct. 31 1977)” の WaveSpectra

本作は、「Zappa は難解でノレない」というロック好きの人には是非一聴してほしい(それでも一般的なロックとはそれなりに異なるのだが)。さすがに6公演全部となるとマニアックになるが、ハイライトの CD 3枚組でも魅力は十分に伝わるはずだ(なお、サブスクリプションでの配信は、本作は残念ながらなさそうである)。

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