基本データ
- アーティスト:
- George Benson
- タイトル:
- Weekend In London
- レーベル:
- Provogue
- リリース年:
- 2020年11月13日
レビュー
- 音質 ★★★★★★★★★☆ (9)
- 曲目 ★★★★★★★★☆☆ (8)
- 演奏 ★★★★★★★★★☆ (9)
- 雰囲気 ★★★★★★★★★★ (10)
ソウル・ジャズのギタリストして、またラヴ・バラードでは甘い歌声を聴かせるブラック・コンテンポラリーのヴォーカリストして、どちらにも名を馳せる George Benson(ジョージ・ベンスン)が、2019年に英国ロンドンの名門 Ronnie Scott’s Jazz Club で行われた公演を録音し、翌年リリースしたライヴ盤である。
ベテランの名演とは、まさに本作のような演奏を言うのだろう。Benson 自身はもちろん、他のミュージシャンも一様にリラックスしているのが音からもよくわかる。それでいてテクニックは確かなのだから、さすがだ。特に Donny Hathaway(ダニー・ハサウェイ)の名曲 “The Ghetto” のカヴァーは、本家のような(12分にも及ぶ)熱量溢れる演奏とはまた異なり、落ち着いた雰囲気ながら聴く者をグイグイと乗せてくるグルーヴがたまらない。
曲目は、上記の “The Ghetto”(Benson はスタジオ盤でもカヴァーしている)を含め Benson のベスト・トラックともいうべき粒揃いの楽曲ばかりだが、彼の長くかつ充実したキャリアからすれば、もっと収録曲があってもいいように思われる。収録時間も全体で1時間15分足らずと、ライヴ盤としてはやや短めだ。そうなると、本作には果たして当日演奏された楽曲のすべてが収められているのか、という疑問が浮かぶ。この点について、さまざまなアーティストのさまざまな公演におけるセットリストを記録した情報共有型ウェブサイト setlist.fm で調べてみると、本作の公演は残念ながら掲載されていないようだが、同時期以降の Benson の公演がいずれも合計1時間30分に満たない程度であることから判ずるに、本作には公演での全楽曲が収められているのだろうと思われる。
さて本作の音質だが、これは素晴らしい。周波数スペクトラムの画像でもわかるように、最低域にピークがあって、最高域までほばまんべんなく音が記録されている。またバランスも非常によい。ダイナミック・レンジもポピュラー音楽としてはそれなりに確保されている。
さらに、観客の雰囲気も十分に捉えられている。本作の公演が行われた Ronnie Scott’s Jazz Club は250人程度収容のクラブだそうだが、その「近い」観客の様子も見えるような録音だ。オーディオ・リファレンスにもよい音源だろう。
Covid-19 が世界的に蔓延する前の、そう大きくない粋なライヴ・ハウスにて、とてもよい雰囲気の中で行われた、熟練による名曲群の名演奏を、最高の音質で収めた名盤。そんな謳い文句でも霞みそうな名「ライヴ盤」が本作だ。